つま先が上らなくなる腓骨神経麻痺の患者さん。
当院に来られたときは、発症からすでに3カ月ほど経っていました。
地域の病院や大学病院でも、明確な原因がわからず、有効な処置もありませんでした。
「もう治らないかもしれないけれど、できることをできるだけやってみましょう」
そう伝えて、施術や物理療法を続け、40日くらいが過ぎました。
「もう、無理かもしれない。あきらめようか、いや、もう少し通院してもらおうか」
最近では、そんな迷いが、私の脳裏に浮かびだしていました。
ところがきのう、それまでピクリとも動かなかったつま先が、初めてピクッと上ったのです。
「いま、上りましたね!」
「うれしい! 私も上ったのがわかった。初めてやわ、上ったの」
「これを大事にして、良くしていきましょう」
「はい! いやあ、良かったあ」
小さな動きですが、やっと脳からの信号が再び足に伝わった瞬間でした。
しおれてしまった植物が、もう一度蘇ることがあるように、麻痺した神経が復活することがあります。
ゴールはまだまだ先です。
普通につま先が上るようになられたら、大喜びしたいです。
ただ、スタートを0、ゴールを100として、0を1にするのと、1を100にするのなら、0を1にするほうが難しいと私は思います。
わずかな兆しを見失わないように、小さな火種を消さないように、今日からまた気持ちを新たにして頑張ろうと思いますが、私のとっては忘れることのない出来事になりました。
つま先が上るって、健康な人にはあたりまえのことですが、ほんとうに奇跡みたいなことなんです。
(この患者さんのメニュー:背骨のゆがみを矯正する施術、縮んで固くなっている脚の筋肉をほぐして伸ばす施術、運動療法、脚のエアーマッサージ、電気治療、腰の牽引療法、自宅でのストレッチングボード)